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論文掲載monograph

東洋医学誌 2000年6月10日

関節運動法(AKA)による腰痛・股関節痛治療


□AKAとは
 関節運動学的アプローチは、元国立大阪南病院理学診療科医長の博田節夫が、欧米の関節モビリゼーションという治療技術をベースに研究開発した運動療法である。
 この関節モビリゼーションに基づいて、リウマチや脳卒中のリハビリで痛みを発生させずに行う方法を研究する 中で、脊椎椎間関節モビリゼーションと仙腸関節モビリゼーションの技術を考案し、関節運動学に基づく関節包内運動の治療法ということで、関節運動学的アプローチ(arthrokine- matic approach : AKA)という名称が用いられるようになった。
 関節運動学という学問は、1970年代に米国のM・A・マックコーネルが、関節の中の関節面相互の動きを研究して発表したのが最初である。
 その後、メンネル(米国)やケルトンボーン(ノルウェー)が、関節包内運動の正常化を目的とした治療法を研究し、「痛みのほとんどは関節内の2つの関節面が骨運動に対して、正常に動かないために起こる」と説明し、これを関節機能異常と名付けた。

□AKA治療の理論
1 関節包内運動
AKAは滑膜関節の関節包内運動を、骨運動に一致させて、正常に行わせる治療法である。関節包内運動とは、関節包内の2つの関節面相互の動きをいい、構成運動と副運動の2つに分けられる。
1)構成運動
 構成運動とは、骨運動に伴って起こる関節面の運動で、滑り・転がり・軸回旋の3つがある。生体では通常の2つ以上の構成運動が組み合わさった複合運動が行われている。
 i)滑り
 平面関節(脊椎椎間関節など)では、平面状の関節面が平行に移動する運動が行われる。
 凹凸の関節(手足の指節間関節など)では一方の関節の接触部はほぼ一定で、他方の関節の接触部は常に移動する運動が行われる。
 ⅱ)転がり
 膝関節では、関節包内の2つの関節面が凹凸になっていて関節面の移動距離が大きく、接触している関節の両面が常に移動し、変化する運動をいう。
 ⅲ)軸回旋
 肩甲上腕関節や股関節などの上腕骨、大腿骨が骨頭になっている関節が、屈曲―伸展運動を行うとき、体幹部の関節面の一点は移動せずに接触を保ちながら、骨頭側の関節面がその周りを回旋する運動をいう。
2)副運動
 副運動とは自動運動(随意運動)では起こらない関節面の運動で、筋肉がリラックスした状態で、他動的に力が加わったときに起こる関節面の動きをいう。離開と滑りの2つがある。
 i)離開
 離開とは、例えば手中手指節関節をやや屈曲した状態(関節の最大ゆるみの位置)で他動的に指を牽引すると、中手骨から基節骨が引き離される。
 関節包内で他動的に動かされるこの運動を「離開」といい、その動く範囲を「関節の遊び」という。
ⅱ)滑り
 副運動の滑りとは、例えば手の中指節関節をやや屈曲した状態で、他動的に指を背側面に圧迫すると、基節骨が中手骨から背側に滑る。この運動を「滑り」という。

2 関節機能異常
1)関節機能異常の原因
 関節機能異常とは関節包内の2つの関節面が、骨運動に伴って正常に動かないために、関節可動域の減少や疼痛、その他のさまざまな症状を発生することをいう。
 関節機能異常が発生する原因は、関節が最大緩みの位置にあるとき、何らかの外力が加わって2つの関節面にズレが生じ、関節包や靭帯が異常収縮して、関節が不適合な状態に固定されて起こると考えられている。
2)仙腸関節の機能異常
 身体の関節の中で、仙腸関節が最も機能異常を起こしやすい関節である。
 その理由は2つある。1つは、仙腸関節は上半身と下半身の接合部で、最も体重がかかりながら身体の運動の中心として運動していること。もう1つは、仙骨と腸骨は強力な靭帯で補強されているが、その靭帯が加齢や病気によって伸縮が不十分になり、関節を正常な状態に保つことができないことである。
 仙腸関節に機能異常が起こると、仙骨及び腸骨に付着する筋にスパズム(筋の硬結)が発生し、次いで背腰部から頚部、腹部、下肢、上肢と全身の筋にスパズムが伝達して、同時に2次的に各関節に機能異常が発生する。

3 関節機能異常の主な症状
 関節機能異常の主な症状には次のようなものがある。(参考文献1の73ページ、表4-1参照)。
 ①疼痛(自発痛、運動痛、圧痛など)
 ②関節可動域の制限
 ③筋のスパズム(筋の硬結・凝り)
 ④感覚障害(痺れ、冷感、知覚鈍麻、知覚過敏など)
 ⑤筋力低下、筋委縮
 ⑥発赤、腫脹
 ⑦皮膚の硬化
 ⑧その他(かすみ目、耳鳴りなど)

4 関節機能異常の治療手技
 AKAの基本的手技は、次の5種類である。
1)離解法
 関節の最大緩みの位置で、一方の関節を固定して他方の関節を引き離す。
2)滑り法
 関節の最大緩みの位置で、一方の関節を固定し、他方の関節を関節面に対して平行に移動する。
3)軸回旋法
 関節の最大緩みの位置で、一方の骨を固定して、他方の骨をその長軸の周りに他動的に回旋させる。
4)凹凸滑り法
 2つの関節面が凹と凸で構成される関節は骨運動の起こる関節面が凹、あるいは凸によって滑りの方向が決まっている。
 i)凹滑り法
 凸の関節面の骨を固定して凹の関節面の骨が運動するとき、凹関節面は骨運動と同じ方向へ滑る。
 ⅱ)凸滑り法
 凹の関節面の骨を固定して凸の関節面の骨が運動するとき、凸関節面は骨運動と反対方向へ滑る。
5)凸軸回旋法
肩関節及び股関節における屈曲―伸展運動は、上腕骨及び大腿骨の凸関節面における軸回旋運動である。軸回旋を助ける方向に押しながら、屈曲―伸展の骨運動を行う。

5 仙腸関節機能異常の検査法
1)立位
 i)体幹の前屈と後屈
 体幹を前屈して、腰部の可動域制限と疼痛発生があれば、仙骨の前屈機能異常があると予想する。
 後屈で症状発生があれば、後屈機能異常を予想する。
 ⅱ)体幹の側屈
 例えば体幹を右に側屈して、右の腰部に可動域制限と疼痛発生があれば、仙骨右側の下方滑り機能異常があると予想する。
 体験を右に側屈して、左の腰部に可動域制限と疼痛発生があれば、仙骨左側の上方滑り機能異常があると予想する。
2)仰臥位
 次の3つの検査方法は、股関節の運動を通じて、仙腸関節の機能異常を予想する。
 i)SLR(膝関節伸展位。股関節の屈曲他動運動)
 この検査で股関節の屈曲可動域制限と疼痛発生があれば、仙骨の前屈機能異常を予想する。
 ⅱ)ファディーフ(股関節の屈曲―内転―内旋―屈曲他動運動)
 この検査で股関節の可動域制限と疼痛発生があれば、仙骨の前屈機能障害と仙腸関節面の後上部及び後下部の機能障害を予想する。
 ⅲ)ファベール(股関節の屈曲―外転―外旋―伸展他動運動)
 この検査で股関節の可動域制限と疼痛発生があれば、仙骨の前屈機能障害と仙腸関節面の前上部及び前下部の機能障害を予想する。

6 仙腸関節機能異常の治療手技
 仙腸関節の関節包内運動は、わずか3~5mm以内と微妙な動きであるので、手技を行ってその動きを判断することが大変に難しい。
 検査と治療は、患側を上に側臥位になり、股関節を約60°の最大緩みの角度に屈曲し、股関節を軽度屈曲した肢位で行う。
1)上部離解法
 一方の手で仙骨を固定し、他方の手で腸骨の上部を側方に引き離すように持ち上げて、仙腸関節面の上部を理解する。
2)前屈上方滑り法
 一方の手で腸骨を固定し、他方の手で仙骨の上部を腹側に圧迫して、次に頭方に滑らせる。
3)前屈下方滑り法
一方の手で腸骨を固定し、他方の手で仙骨の上部を腹側に圧迫して、次に足方に滑らせる。
4)後屈上方滑り法
一方の手で腸骨を固定し、他方の手で仙骨の下部を腹側に圧迫して、仙骨の上部を後屈させ、次に頭方に滑らせる。
5)後屈下方滑り法
一方の手で腸骨を固定し、他方の手で仙骨の下部を腹側に圧迫して、仙骨の上部を後屈させ、次に足方に滑らせる。
6)後上部離開法
一方の手で仙骨を固定して、他方の手で腸骨の後上部を側方に引き離し、仙腸関節面の後上部を離開する。
7)後下部離開法
一方の手で仙骨を固定して、他方の手で腸骨の後下部を側方に引き離し、仙腸関節面の後下部を離開する。
8)前上部離開法
一方の手で腸骨を固定して、他方の手で仙骨の上部を腹側に圧迫し、仙腸関節面の前上部を離開する。
9)前下部離開法
一方の手で腸骨を固定して、他方の手で仙骨の下部を腹側に圧迫し、仙腸関節面の前下部を離開する。

7 AKAを行う場合の注意
 AKAを行うときには、以下のことに注意する必要がある。
 ①AKAはソフトな力で行う治療なので、危険性のないことを説明する。
 ②患者を精神的にリラックスさせ、身体の力を抜くようにさせる。
 ③身体的に安定する肢位を選び、治療する関節を最大緩みの位置で手技を行う。
 ④痛みを発生させるような強い力で行わず、患者の反応を見ながら行う。関節機能異常のある関節に適切なAKAを行うと、大抵は気持ち良く感じるので、気持ち良い程度の強さで行う。
 ⑤突発的、瞬間的な力を加えてはならない。ゆっくりした操作で手技を行う。

8 AKAの禁忌症
AKAは治療効果が高いが、もちろん何にも効くわけではない。禁忌症としては、次のようなものがある。
 ①骨折、骨のヒビ、骨腫瘍、化膿性関節炎など。②関節捻挫の急性期で、靭帯の一部が断裂しているとき。③関節リウマチの急性期で、発赤や腫脹の炎症症状が激しいとき。

9 評価(治療効果の確認)
1)仙腸関節機能異常の消失の確認
 ⅰ)仰臥位
 仰臥位で①SLR②ファディーフ③ファーベルの3つの検査を行い、治療前の症状が消失していることを確認する。
 ⅱ)立位
 立位で①体幹の前屈運動②体幹の後屈運動③体幹の側屈運動の3つの検査を行い、症状が改善していることを確認する。
2)患部の関節の症状消失を確認
 患部の関節の自動運動を行い、関節可動域が改善して、疼痛などの症状が消失していることを核にする。

□AKAによる基本的診断法
 整形外科的な疼痛のほとんどは関節機能異常が原因であり、その関節機能異常の約80%は仙腸関節の機能異常が第1次的原因である1)。
 また腰痛の既往歴や現病歴があるときは、必ず仙腸関節の機能異常があるので、この関節の診断を最初に行う。

1 仙腸関節機能異常の検査法
1)立位
 立位では、①体幹の前屈②体幹の後屈③体幹の左右側屈について調べる。
2)仰臥位
 仰臥位では、①SLR②ファディーフ③ファベール④腹部を触診して硬結や圧迫不快感、冷感などがないかを調べる。(腹部の触診はAKAとしての検査ではないが、治療手技選択の判断として行う)

2 脊椎椎間関節の機能異常の検査法
 患側を上にして側臥位になり、以下の順序で行う。
 ①棘突起を触診して詰まりや圧痛があれば、その棘突起間の椎間関節に機能異常がある。
 ②脊柱起立筋を触診して、筋に硬結・圧痛があれば、その部位の椎間関節に機能異常がある。
 ③胸腹部を触診して、圧痛や硬結、圧迫不快感、冷感などを調べる。(この検査はAKAとしての検査ではないが、治療関節の選択の判断として行う)

3 障害関節の機能異常の診断
 ①障害関節に疼痛の発生する骨運動を行い、関節可動域の制限と疼痛発生を確認する。
 ②障害関節にAKAを手技を行って、症状の改善を確かめ、AKAの適応と判断する。


□AKAによる基本的療法
1 仙腸関節のAKA
1)治療手技の決定
 治療手技を決定するときには、次の①、②、③の検査を行い、総合的に判断して、最適治療手技を1つないし2つ選択する。
 ①仙腸関節の機能異常を検査して、手技を予想する。
 ②腹部の症状部位を患者の手で圧迫して、仙腸関節の治療手技(主要な5つの手技:上部離解法、前屈下方滑り法、後屈上方滑り法、後屈下方滑り法)を行い、腹部照応を軽減できる手技を選択する。
 ③患者の症状が、手足や頚などであれば、仙腸関節の治療手技を行いながら患部を運動させて、症状が軽減する手技を選択する。
2)治療のポイント
 実際の治療を行う際には、次の点に注意する。
 ①治療手技を、1回約10秒間ぐらい持続的に行う。②治療手技を行うと患者は、仙骨部に気持ちよさを感じるので、その気持ちよさが消失するまで行う。③腹部に症状がある場合は、その症状が軽減するまで行う。④手足の患部に治癒効果として響きが起こる場合は、その響きが消失するまで行う。⑤腹鳴が起こるときは、鳴り止むまで行う。
3)治療効果の確認
 ⅰ)仰臥位
 SLR、ファディーフ、ファベールを行って、治療前にあった仙腸関節機能異常が改善していることを確認する。
 ⅱ)立位
 体幹の前屈、後屈、側屈を行って、治療前にあった仙腸関節機能異常が改善していることを確認する。
 ⅲ)主訴の患部
 主訴の患部の関節を運動させて、症状が軽減していることを確認する。

2 脊椎椎間関節のAKA
1)治療関節の選択
 ①背腰部の脊椎椎間関節部に痛みがある場合は、その部位の椎間関節に機能異常があるので、その椎間関節で構成する棘突起間にAKAを行い、症状の軽減することを確かめて治療関節とする。
 ②脊椎からやや離れた胸部・腰部の脇に疼痛などの症状がある場合、まはた胸腹部に症状がある場合は、その部位とほぼ同じ高さの棘突起間を触診して、詰まりと圧痛を確かめて治療関節とする。
 ③上肢に疼痛などの症状がある場合は、上肢は仙腸関節機能異常が改善していることを確認する。
上部胸椎と一定の関係があるので、教科書(参考文献1)の法則に則って患部に対する治療椎間関節を判断し、AKAを行って症状の軽減を確かめて治療関節とする。
 また、中医学の経絡説の理論から、背腰部の経穴と上肢の経絡は関係があるので、上肢の患部と背腰部の経穴の位置する椎間関節部の筋の硬結、その棘突起間の詰まりや圧痛を調べてAKAを行い、上肢の症状の軽減を確かめて治療関節とする(表1)。
 ④下肢に疼痛などの症状がある場合、下肢と腰部、仙骨部には、AKAの理論では一定の法則が認められていないが、関係は深い。
 中医学の経絡説では、背腰部・仙骨部の経穴と下肢の経絡は密接に関係があるので、下肢の患部と仙腸関節部の筋に硬結や圧痛、棘突起間の詰まり・圧痛の有無を調べてAKAを行い、下肢の症状軽減を確かめて治療関節とする(表2)。
2)治療のポイント
 脊椎椎間関節の治療を行う際には以下のことに注意する。
 ①関節機能異常のある椎間関節、あるいは棘突起間に詰まりや圧痛のある椎間関節にAKAを行う。
 手技は一方の手の母指で、上位の棘突起を天井側から圧迫固定し、他方の手の中指で下位の棘突起を床側から持ち上げて、上下の棘突起を左右にずらすように圧迫する。この操作によって機能異常を起こしている椎間関節に滑り、あるいは離開が起こり、関節機能異常が改善される。
 ②1回約10秒間ぐらい、気持ちよく感じる強さで持続的に行う。
 ③AKAを行うと棘突起間に、痛気持ちよい感じが起こる。その感じが消失するまで行う。
 ④腹部や手足に症状がある場合は、その症状が軽減するまで行う。
 ⑤腹鳴が起こるときは、鳴り止むまで行う。
3)治療効果の確認
 以下の手順で治療効果の確認をする。
 ①棘突起間を触診して圧痛の消失を確かめる。②治療椎間関節部を触診して、筋の硬結と圧痛の消失を確かめる。③胸腹部に症状がある場合は、その部位を触診して症状の軽減を確かめる。④手足や肩、頚に症状がある場合は、その部位を運動させて、症状の軽減を確かめる。

3 上肢・下肢の障害関節のAKA
1)治療手技の選択
 障害関節を、いろいろな方向に自動運動させて、最も関節可動域制限や疼痛の発生する方向を調べる。そして、①離解法(この手技は必ず治療手技になる)、②滑り法、③屈曲伸展と凹凸滑り法を組み合わせ、④軸回旋法、⑤凸軸回旋法といった、疼痛の発生する方向のAKAを行い、症状の軽減を確かめて治療手技を決める。
 また治療適応手技を行うと、患者は関節部に気持ちよさを感じるので、これも選択の判断とする。
2)治療のポイント
 治療手技を1回約10秒間ぐらい、気持ちよく感じる強さで持続的に行う。
3)治療効果の確認
 障害関節を症状が発生する方向に運動させて、症状が軽減していることを確かめる。

□腰痛・股関節痛のAKA治療の実際
 ここでは、腰痛・股関節痛患者を取り上げ、AKA治療の実際を紹介する。
症例:44歳、女性。介護ヘルパー、身長155㎝、体重48㎏。
主訴:①ベッドに寝ていて起きて降りようとすると、右股関節部が痛む。②中腰で右腰痛が起こる。

1 問診
 現病歴:昨年の7月に、駅で転んで左臀部を打撲し、軽い腰痛が続いていた。12月に山登りをしたところ、右腰から股関節全体が重だるく痛み出した。
 現在、ヘルパーの仕事に就いており、中腰で人を抱き上げるときに腰が痛む。また、寝ていてベッドから降りようとして右足を開いて床に着くとき、股関節部痛む。
 今まで足が冷えるということはなかったが、今年の冬は冷えを感じるようになった。
 大学生のころ、剣道の練習で右股関節を痛めたことがある。
 既往歴:重傷の病気や大けがをしたことはない。
 感覚器官、その他の身体症状:歯は虫歯が多い。風邪はめったに引かないが、引くと大風邪になる。やや便秘気味、好きな食べ物はケーキ。嫌いな食べ物は小豆あんこで、胸やけがする。月経は正常。

2 検査
1)立位
 ①体幹の前屈を行うと、指先がちょっと床に着くまで曲げられる。このとき腰全体と右大腿後側部にわずかに突っ張り感が生じる。仙骨の前屈機能異常が予想された。
 ②体幹の後屈を行うと、約30°ぐらいまで曲げることができるが、右腰の下部に痛みが出る。仙骨の右後屈機能異常が予想された。
2)仰臥位
 ①左足はSLR、ファディーフ、ファベールを行って、すべて関節可動域は正常で疼痛の発生はない。
 ②右SLRは約80°で臀部と大腿後部に突っ張り感が起こった。
 ③右ファディーフでは、鼠径部に疼痛発生。経絡では肝経と脾経の変動が予想された。
 ④右ファベールを行うと、強く可動域制限があって、右股関節部が外れるような痛みが発生するという(図1)。経絡では胆経の変動が予想された。
 ⑤右股関節外転では、約70°で疼痛発生。
 ⑥腹部を触診すると、右上腹部と右下腹部に圧迫不快感がある。
 ⑦仰臥位から起きて、右に足を開いてベッドから降りる動作を行ってもらうと、股関節の前側にキクッと痛みが出て、力が入らない感じがするという。

図1


3 仙腸関節のAKA
1)治療手技の選択(右上側臥位)
 仙腸関節の主要な手技5つを、1つずつ行いながら、次の2つの検査を行って最も検査の症状が軽減する手技を選択した。
 ①患者の手で右下腹部を圧迫して不快感を確認しておき、1つ手技を行うごとに圧迫して症状の軽減を確かめた。
 ②右足関節を強く背屈すると、股関節部に鈍い痛みが起こるというので、1つ手技を行うごとに足関節を背屈し、どの手技で最も股関節の症状が軽減するかを調べた。
 その結果、最適治療手技は、後屈下方滑り法であった(図2)。
 また、ファベールで股関節部に痛みが起こったので、前下部離解法(図3)を行いながら足関節を背屈すると、この手技でも股関節部の痛みが軽減した。
 ファディーフで発生する鼠径部の症状に対しては、後上部・後下部離解法を選択した。
2)治療
 ①後屈下方滑り法を1回約10秒間ぐらい持続的に行い、足関節を背屈しても股関節部に痛みが発生しなくなるまで行ったところ、6回で消失した。
 ②仙骨の前屈機能異常も少しあったので、前屈下方滑り法を1回行った。
 ③前下部離解法は、されると気もちよいというので、気持ちよさが消失するまで行った。
 ④後上部・後下部離解法を行って何も感じがしなかったが、1回ずつ行った。
 ⑤左上の側臥位になり、仙腸関節の5つの手技の気持ちよさで判断すると、左側も後屈下方滑り法であった。この手技を3回行った。

図2 図3


4 脊椎椎間関節の治療
1)治療関節の選択
 次の2つの検査を行って、治療関節を選択した。
 ①棘突起間を触診して、詰まりと圧痛を調べる。
 ②脊柱起立筋を触診して、筋の硬結を調べる。
検査の結果、機能異常のある椎間関節は、次の3ヵ所であった。
 ①L5-S1椎間関節(この関節部位は体幹を後屈して、腰痛の発生したところである)。
 ②T10-T11椎間関節
 ③T9-T10椎間関節
2)治療
 ①L5-S1椎間関節の離解法を行うと、股関節の痛みが出るところに気持ちよく響くという。また右下腹部を患者の手で圧迫しながら行うと、圧迫不快感が軽減したので、股関節ヘの響きがなくなるまで5回行った(図4)。
 ②T10-T11椎間関節とT9-T10椎間関節の滑り法を行うと、両方のAKAで胃にムカムカsyry感じが起こった。胃に不快感を起こさせないで、背骨の部位に気持ちよさを感じる程度の弱い力で3回ずつ行った(図5)。

図4 図5

5 仙腸関節と脊椎椎間関節の治療効果の確認
 仰臥位になり、以下の順序で行う。
 ①右SLRを行うと約80°であるが、右臀部と大腿後側部に突っ張り感が発生しない。
 ②右ファディーフでは、鼠径部の痛みが半減した。
 ③右ファベールでは、股関節屈曲して外転する角度が広がって、痛みも軽減していた。しかし、左足のファベールを行って、その屈曲・外転角度を比べると、まだ可動域制限があった。
 ④起きてベッドから右に降りる動作を行うと少し改善したせいか、普通の速さで行ったところ、股関節部に痛みが出た。

6 障害関節・股関節のAKA(仰臥位)
 股関節を屈曲して、外転・外旋と内転・内旋を行うと症状が発生するので、次の順序で股関節の凸滑り法と外転・内転のAKAを行った。
 ①股関節離解法(基本手技、図6)
 ②股関節屈曲位で、外転と凸滑り法(図7)
 ③股関節0度(体幹と下肢が平行)肢位で、外転と凸滑り法(図8)
 ④股関節屈曲位で、内転と凸滑り法(図9)
 どの手技も無理に行うと痛みが出るので、痛みの出ない強さから何回も行い、少しずつ可動域の範囲を広げていった。その結果、左足ファベールの正常な可動域に対して、約80%ぐらいの可動域に広がったので、1回目の治療を終了した。

図6 図7
図8 図9

7 治療効果の確認
1)仰臥位
 起きてベッドから降りる動作を行ってもらうと、スッと起きて右足を降ろしてもキクッという痛みがなく、重だるい痛みに軽減していた。
2)立位
 ①前屈すると床に指が楽に着いて、腰部と右大腿後側部の突っ張り感がほとんど起こらない。
 ②後屈すると、右腰部にやや痛みが発生するが、治療前よりはかなりよいという。

8 予防法
 予防法として、次の内容を説明した。
 ①右上側臥位になり、両手で右の膝を胸に抱え込むようにして、仙骨の前屈運動を行う。次に、右の手で右足首を掴んで背部に持ち上げ、仙骨の後屈運動を行う。②足腰を冷やさないように、厚着をする。③お風呂に十分に入り、からだを温める。④中腰でお年寄りを介護するときは、できるだけ前かがみにならず、膝の曲げ伸ばしで持ち上げるようにする。

9 治療のまとめ
 ①症状の経過を推測すると、最初、転んで臀部を打撲したときは左腰が痛かった。しかし、登山をした後から右腰と股関節の痛みに変わったのは、左腰の痛みをかばって右足に体重を多く掛けて歩いているうちに、右に負担がかかり昔の古傷(右股関節痛)があったので、症状が発生したものと考えられる。
 ②1回の治療で改善効果が認められたので、あと数回の治療でひどい痛みは改善すると思われる。しかし、最近になって始めた仕事が、特に腰に負担をかける仕事なので、予防的に継続治療が必要である。



参考文献
博田節夫編:関節運動学的アプローチ・AKA、医歯薬出版


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